農村開発プロジェクトの実施方法
 〜マイクロプロジェクト

プロジェクトで行っている村での開発支援の実施方法は大きく2つに分けられます。マイクロプロジェクトと研修です。

マイクロプロジェクトとはその名のとおり規模の小さな開発事業のことです。CDRTは、村とのパートナーシップにより開発事業の実施を支援していくという原則で動いています。つまり、CDRTから支援を一方的に提供するわけでもなく、また村人だけでやってもらうというわけでもなく、お互いに対等の立場でそれぞれの責任を担ってやっていこうとしています。

マイクロプロジェクトを実施するにはマイクロプロジェクトプロポーザル(MPP)という文書をCDRTと村との間で作成します。MPPは各タウンシップで定期的に開かれる審査委員会(Micro-Project Review Committee = MRC)で審査され、承認されるとヤンゴンの本部事務所へ送られそこで再度審査が行われます。ここでプロジェクトマネジャーによる承認が下りると、晴れてプロジェクトからの資金提供を受けることができます。

MPPが採集承認されたあとは、MOAと呼ばれる同意書に住民とCDRTの間で署名を交わします。MOAはいわばCDRTと村との間の契約書で、お互いに責任の分担事項が書かれています。MPPやMOAそのものも重要ですが、あくまでも単なる文書です。大切なことは、これを準備するプロセスです。原則としてMPPは村人たち自身がイニシアチブをとり、村の中で意思決定をして、CDRTに対して提案をする必要があります。もちろんCDRTのスタッフが助言をしたり、MPP作成の手助けをしますが、あくまでも後方支援であり主体性は村人にとってもらうように気を払っています。このプロセスそのものが村人たちとっては学びの機会となるからです。また他人から与えられたものには当事者意識は芽生えにくいですが、自分で考えて、やろうと思ったことには責任感が生まれます。このようにして、村での活動支援を行う時には、村人の主体性を最大限に生かすような工夫をしています。

当然ながら、このプロセスはなかなかすんなりとはいかず、村人ははじめのうちはスタッフに頼って楽な道を進もうとします。そんなときCDRTスタッフには高度なファシリテーションのスキルが求められます。ですから、スタッフ研修はプロジェクトが特に重視している分野となっています。

【管理人による追加コメント】
2005年初頭まではこのプロセスはかなりスタッフの裁量に任せてきました。それはそれで良い面もあったのですが、逆に言えば、各スタッフでやり方がバラバラ。これをある程度、標準化

話を元に戻します。MPPにより実施される活動は多岐にわたります。大きく分けるとこれまた2つの分野があります。村のインフラストラクチャー(社会基盤)に関するものと、世帯レベルの生計向上に関するものの2分野です。前者は学校、給水施設(手掘り井戸、ため池)、保健所などがあります。後者には農業分野における土地改良や家庭菜園、畜産分野における家畜の予防接種や改良種導入の支援などがあります。実施されるマイクロプロジェクトは、今フェーズが始まった2003年1月から2004年12月までに4,959件ありました。1件あたりの事業費用は平均300ドルほどです。これら一つひとつが村とCDRTとの緊密なやり取りの結果できるものですから、スタッフの仕事量は相当なものであると想像していただけるかと思います。

どのような活動であれ、マイクロプロジェクトにかかる費用はCDRTと村人の間で折半されます。必ずしも決まった割合があるわけではなく、村人の財政事情や活動の種類によって異なります。ここでも原則としては、村人が主体となりイニシアチブをとるということを目的としています。

研修についても原則はMPPと同じですが、こちらは計画段階でスタッフの果たす役割がより大きいといえます。またもう一つの大きな違いは、研修として行う活動については村人はほとんど無料で受けられるということです。研修として行う活動にはデモンストレーション(農業や畜産などの技術、品種などの試行事業)も含まれます。

プロポーザルの作成から活動の実施へ

開発活動の開始」で説明したように、各村にでは開発のための活動計画が村人によって策定されていますので、これに基づいて活動が実施されていきます。

上述のように、活動実施のための支援をCDRTから得るには村人がマイクロプロジェクトのプロポーザル(MPP)を作成してCDRTへと提出する必要があります。MPPが承認されるとMemorandum of Agreement(MOA)という同意書をCDRTと村人の間で結びます。この場合、村人とはマイクロプロジェクトを実施するための組織のことで、既存の組織の場合(PTAなど)もありますし、新たに結成される場合(井戸組合など)もあります。このような組織はCommunity-based Organization(CBO)と呼ばれ、普通の村人がメンバーになります。通常は10人ぐらいの組織で、CDRTでは女性の参加を促すために必ず半数は女性のメンバーにするよう勧めています。このMOAは法的効力を持った書類で、CBOとCDRTの責任事項それぞれが明記されています。またCDRT側から支援のための資金を拠出する条件や時期も明記されています。

プロポーザルの作成から活動実施への流れは以下のようになっています。

村の開発活動計画の策定⇒実施する活動の選定⇒実施組織(CBO)の結成⇒プロジェクトスタッフとCBOの話し合い⇒CBOによるリクエスト⇒スタッフとCBOの話し合い⇒MPPの作成⇒MOA締結⇒エリア本部へ提出⇒審査委員会⇒プロジェクトマネジャーの承認⇒活動開始


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