村での開発支援活動をどう始めるか

ここでは、今までにCDRTがどのようにして対象村落での支援活動を始めたかというプロセスについて説明します。今では423村落を対象とするCDRTですが、ここに来るまでには遠い道のりでした。その長い道のりのスタート地点は次のような流れで説明できます。

地元の役所・有力者への説明⇒対象村落の選定⇒村人による現状分析および開発活動計画の策定

地元の役所・有力者への説明

ミャンマーではUNDPの決まりとして、政府機関へ直接ん支援は行わないことになっています。そうとはいえ、地元役所の協力なしには村落開発の支援はできません。地元役所は活動のための予算はほとんどなく開店休業状態ですが、CDRTから要請をして住民への研修(助産婦、保健員、農業普及員など)をやってもらったりしています。

この段階では、地元の関係者を集めて、CDRTの原則や活動内容などについて説明を行います。通常1日で終わります。

対象村落の選定

CDRTでは各タウンシップで35から40ぐらいの村を対象として支援を行っています。タウンシップには100以上の村があるので、その中から対象となる村落を選定しなければなりません。この選定を行うのは地元の村代表の人たちです。私たちCDRTスタッフではありません。私たちはあくまでもファシリテーターとして選定のための議論を助けるのが役割です。

選定のためにはその基準が必要となります。基準はこちらから提案するものもありますし、参加者のほうから提案してもらうものもあります。選定基準の例としては学校の規模・状態、安全な飲料水の量とアクセス、食糧確保、所得、家畜の保有状況、土地所有状況、家屋の状態、コミュニティの関心度などがあります。この選定作業を通じて、村の代表者たちにはCDRTの透明で開かれたプロセスを体験してもらい、自らの体験をもって私たちの目指す開発支援のあり方を理解してもらいます。つまり、意思決定や計画、実施などの主体・主導権はコミュニティにあるということです。もちろんこういった村の代表者に主役になってもらうのは、この選定作業が最初で最後といってもよく、実際の村での開発活動は村人の中でも貧しい人たちが主体になります。他の援助機関はあまり気にしていないようですが、村の代表者を通じて支援を行うと、支援を本当に必要としている人たちに支援が届かないばかりか、既に力を持った人たちの力をさらに強めてしまうことにもつながります。特に貧困層を対象にしたプロジェクトでは避けなければいけないネガティブなインパクトです。

村人による現状分析および開発活動計画の策定

一般にPRA(Participatory Rural Appraisal)として広く知られる分析ツールの多くを使って行われますが、ツールはあくまでも単なるツールであり、たいした問題ではありません。PRAは(元々の思想とは異なり)、支援を行う側が活動を行うための情報を得るために行われていることがよくあります。しかし重要なことは、住民が自分たちの置かれた状況を冷静に分析して、それを改善するための方法を考えるということです。これはもちろん2、3日で達成できるようなものではないので、少なくともそのような機運を高めようとすることが大切です。この時点では、これから2、3年やそれ以上にわたってCDRTと村との二人三脚が始まるわけですから、ここでの作業は「村の自立へ向けた第一歩」として位置づけられるべきです。決して「支援開始の第一歩」ではありません。何が違うかというと、誰の視点で物を見ているのかということです。後者は支援する側の視点、あるいはその都合を考えた発想です。ファシリテーターである私たちスタッフの役割は、住民が分析やその結果を行動へと移すことを少しでも用意にすることであり、そのための手段や場を提供することです。

この村人による現状分析から活動計画までの一連のプロセスには約3日間かけます。3日という時間は短いので、とりあえず村の人たちに村の開発を考え始める契機としてもらい、その後も村人が村の状況を分析して、その分析に基づいた開発計画を立て、計画に基づいて活動を実施していくというプロセスを継続して支援していきます。423ある村の一つひとつでこのプロセスを踏んで支援を行っています。このプロセスは終わりのあるものではなくサイクルです。行動、分析(ふり返り・学び)の繰り返しです。しかし、実際にはCDRTではこのふり返りの部分が弱く、これから強化していかなければいけない課題の一つとして認識しています。


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