本の紹介
2004年1月7日
One Minute Sales Person
by Spencer Johnson (William Morrow & Co, 1984)
著者はWho Moved My Cheese?でも有名なスペンサー・ジョンソンです。また、One Minute Manager(一分間マネジャー)の共著者でもあります。この本も一分間マネジャーからのアイデアが後半で紹介されています。
この本を読もうと思ったきっかけは、国際協力・開発支援においてもセールス(営業)の考えが大切と以前から感じていたからです。表紙にもあるように、セールスとは製品やサービスの売り込みだけではなく、アイデアの営業もあります。それに開発支援も住民に対して生活改善というサービスを売る仕事という捉え方もできます。
この本の中で私が共感したのは次のところです。
"People hate to be sold, but they love to buy" (pp. 43).
"People don't buy our services, products, or ideas. They buy how they
imagine using them will make them feel" (pp. 49).
国際協力では途上国の人々にサービスを「売る(有料で提供する)」ことはありません。でも、私たちがお薦めするまたは一緒に考えた生活改善のための活動(=アイデア)を買って(受け容れて)もらうには、その活動を行うことで彼らが実現できるよりよい生活のイメージを持ってもらうことが大切です。
そのためには、"ability to ask relevant questions and use intense listening"
(pp. 47)が必須です。両方とも開発ワーカーあるいはファシリテーターにとってもっとも基本的なスキルです。
そして、"clearly point out the difference between what they've got
and what they want, so they can recognize their problem and discover the
feelings they want" (pp. 47)も開発ワーカーの重要な役割と思います。もっとも、ビジョン(what
they want)は住民自身が描くべきもので、外部者は押し付けではなくコーチのような存在でその手助けをすべきです。ここでも、質問と傾聴のスキルが活きてきます。これらはコーチングでも基本スキルとされています。
このように本書の前半は「人への売り込み」、後半は「自分への売り込み」という構成になっています。この後半部分もなかなか興味深かったです。基本的にはセルフファシリテーションあるいはセルフコーチングともいえる内容です。まずは自分の目標(Goals)を明確にして、それに基づいて行動する。この目標は、その情景が思い浮かぶくらいリアルな表現で書き留めておき、それを常に読んで思い出すようにすると、おのずとその目標が達成できるようになるとスペンサーは書いています。もっともただ思い出せばよいわけではなく、目標に向かって行動を起こす必要はあります。行動を起こすために、目標を基準として自分を褒めること(praising)と叱る(reprimand)ことを勧めています。つまり、@目標設定、A称賛、B叱責をそれぞれ1分間ずつ行うことが「自分への売り込み」の構成・手順です。
ここで私が共感したのは、"We become what we think about" (pp. 71)です。これは以前に紹介したAppreciative Inquiryとも共通点があります。ポジティブ思考の代表選手のようなセンテンスです。私たちは私たちが考えるとおりの人間になる、という意味です。イメージがポジティブであればポジティブに、ネガティブであればネガティブに。医療分野ではプラシーボ効果が有名です。偽の薬でも、それを服用することで治ると思えばたいていの病気が治ってしまうというわけです。「病は気から」ということですね。