現場ジャーナル 3月14日-3月20日


2005年3月14日(月)

今日は雨が降りました。ほんの20分ぐらいでしたが、この時期に雨が降るのは本当に珍しいことです。確か雨期が明けた10月ごろから雨は降っていなかったと記憶しています。毎年4月中旬のティンジャン(水祭り。ミャンマーの正月)の前には雨が何度か降り、ティンジャンレインと呼ばれていますが、今日の雨はそう呼ぶにはまだ早いようです。

チン州では遠方からの客が来たときに雨が降ると、その客が幸運も一緒に連れてくるという言い伝えがあるそうです。そういえば、国連ボランティア計画(UNV)本部(ドイツ・ボン)から担当者がミャンマーへ来ていて、今日はその人とミャンマーで働いている国連ボランティア2人と昼食を一緒しました。このドイツからの来訪者は幸運を運んできてくれたのでしょうか。

それはさておき、この人からなかなか面白い話が聞けました。彼女はミャンマー人で長年にわたり国連機関に勤め、今はUNV本部に勤務しています。はじめはミャンマーにあるユニセフ事務所で事務の仕事をしていたそうです。その後、ラオス、中国、モンゴルなどのユニセフ事務所で同じように事務の仕事を15年以上経験したあと現在のUNVへ移りました。このように国連では一度組織の中に入って認められると次の仕事もけっこう簡単に見つかってしまうようです。もちろん誰でも簡単に、とはいかないでしょう。どこの世界でも同じですが、最後にモノをいうのはやっぱり人とのネットワークのようです。

本日のミャンマー語講座!
Dine bamar lo thin khan sa ba le(ディネ バマーロ ティンカンサ バーレー)?今日のビルマ語レッスンは何ですか?
ディネは「今日」、「レッスン」はティンカンサです。バーレーは「何ですか?」です。日本語とまったく語順が同じというところが面白いですね。


2005年3月15日(火)

本日のミャンマー語講座!
Moe beloud kyar aung ywar le(モー ベラウ チャーアウン イワー レー)?雨はどのくらい降りましたか?
Moeは雨、beloud kyar aungは「どのくらい(時間・期間)」、ywarは降るです。


2005年3月16日(水)

今日はHIV/AIDSプロジェクトのスタッフと打合せを行いました。HIV/AIDSプロジェクトでは、HIV/AIDSの拡大を防ぐための教育・研修・キャンペーンをコミュニティベースで実施するとともに、感染者のいる家庭での看護を支援する活動を行っています(詳しくはUNDPミャンマー事務所のHPへ)。資金はUNDPが拠出し、UNOPSがプロジェクトの管理・運営を行っています。私が働くCDRTプロジェクトと同じ実施体制で、私たちの姉妹プロジェクトともいえます。

このHIV/AIDSプロジェクトとCDRTプロジェクトが一緒に活動することは今まで少なかったのですが、今回はコミュニティでのエイズ教育で協力することになりました。CDRTが対象とする地域の中では特にカチン州でエイズの問題が深刻になりつつあります。カチン州は天然資源に恵まれたところで、チーク(木材)、翡翠(ヒスイ)、ルビー、金などが有名です。中でも特に翡翠鉱山や金の採取場などで働く作業員の間でエイズが拡大しています。おそらく売春婦を介して感染が拡大しているとみられています。

協力に関する具体的な話はすでに進んでいて、HIV/AIDSプロジェクトが教育・研修のための教材パッケージをつくり、CDRTで支援している女性グループを通じてエイズの予防知識などを広めていこうと考えています。つい最近HIV/AIDSプロジェクトのスタッフがカチン州を訪れて、この教材パッケージを試してきたので、今日の打合せではその報告を受けました。これからは現場での教訓を踏まえてパッケージを改善したあと、パッケージを使って村人に研修を行う研修員を育成します。この研修員となるのはSRGメンバーです。CDRTではすでに保健教育を行っていて各村には保健教育員が一人ずついます。エイズ教育の研修員もこの保健教育員の中から輩出します。とりあえずエイズ研修員の数は15名ですが、この人たちがそれぞれの村で研修を行うとともに周辺の村を訪れてすでにいる保健教育員へのエイズ教育も行います。このようにしてエイズに関する知識が村人たちの間で広まっていくという効果を期待しています。

CDRTプロジェクトで働いていてよかったと思う理由の一つは、計画したことがすぐに実施できるということです。当たり前のように聞こえるかもしれませんが、国際協力やODAなどと呼ばれる支援活動の中には「調査」というのが少なからずあり、調査だけをやって調査結果を実施に移すことがないということがあるのです。しかも調査には莫大な費用がかかっています。そんな費用をかけるのであれば、地元の人を雇って地道な支援ができると思うのですが…。この話は長くなるのでこのへんにしておきます。

本日のミャンマー語講座!
Lu ma shi bu(ルー マシーブー)?人がいない(お客がいない)。例えば店に客がいないときなどは、このように「人がいない」と言うそうです。


2005年3月17日(木)

イラクで国連事務所が爆破されてからというもの、国連でも職員の安全対策はますます大きな課題となっています。UNDPミャンマー事務所でも安全対策をとり始めています。安全対策専門の職員を雇用したり、避難訓練をしたり、爆発などで窓ガラスが飛び散らないようにする工事などもやっていました。

また全世界の国連職員は各自でBasic Security in the FieldというCD-ROMに入ったセルフラーニングプログラムをやることになっていて、私は今日それをやってみました。内容はとても物騒で、地雷やら襲撃やらハイジャックやら内戦やら暴動やら。ミャンマーはとにかく安全な国なのでとかくこのような感覚が鈍ってしまいますが、改めて国連職員が働く環境というのは過酷なんだなあと他人事のように感じてしまいました。

内容とは関係がないのですが、面白かったのはプログラムの台本を読む人のアクセントです。さすが国連というのか、どこの国の人の英語かわかりませんが、なまりの強い人が台本を読んでいます。それからプログラムの最初のほうに注意事項として、プログラム中の映像、音声、写真などで具合が悪くなるかもしれないので、そのときはUNのドクターに相談するようにとあります。はじめは大袈裟だなあと思っていたのですが、考えてみると、過去にそのような体験のある人にとっては確かに深刻な問題かもしれません。プログラムの中では国連職員が車で移動中に何者かに襲われて発砲され、悲鳴があがるという場面がありました。こんなことがあると確かにトラウマになるでしょう。国連ではありませんが、私の知っている人は中米の某国でライフルで武装した山賊らしきグループに車を止められ、パンツ以外はすべて持っていかれたという事件に巻き込まれました。もっともこの方にとってはたいしたトラウマにはなっていないようでしたが。幸い私はそんなトラウマになるような経験は今までにありません。予約していた便の一つ前の飛行機が離陸後すぐに落ちて乗員乗客全員が亡くなったという間一髪の経験があるぐらいです。


2005年3月18日(金)

ピィンマの花UNDP事務所の前にはカンドヂーという湖があり、その周辺をぐるりと囲む道路には薄紫の花をつけた木が並んでします。ミャンマー語ではピィンマというそうです。乾期の間は花どころか緑も少なくなります。でも月曜日のようにまれに雨が降ると、待ってましたとばかりに花が咲きます。写真の花もその雨のあと咲きました。

この時期に咲く花で有名なのはパダウです。これも木に咲く黄色い花です。1年のうちでも4月中旬のティンジャン(ミャンマー正月)の前後にしか咲きません。しかも短い間だけです。日本の桜のような印象を私は受けました。一方で桜とちょっと違うのは、この花が決まった時期にほんの短い間だけ咲くので、純愛の象徴とされているところです。決して裏切らない愛を誓って好きな人にこの花を送るそうです。

本日のミャンマー語講座!
Kate sa ma shi bu(ケィッサ マシーブー)?問題ないよ(気にしないで)。
英語でいうIt doesn't matter.です。ケィッサはmatterにあたるようです。同僚たちが話しているのを聞いていて耳には入っていたのですが意味は知りませんでした。日常会話でよく出てくる表現です。


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