Self Reliance Group (SRG)

Self Reliance Group(SRG)は、インドのNGO、MYRADAがつくったセルフヘルプグループをモデルとしています。メンバーは全て貧困世帯出身でほとんどが女性(メンバーの92%)です。このグループの主目的は、日本の頼母子講や無尽とよく似ていて、メンバーが少しずつ貯蓄して、グループとしてまとまった額ができたところで困っているメンバーへ無担保で貸付をするというものです。またこの目的とは別に、グループの仲間と一緒にワイワイと活動することによって、メンバーは自信を深めていき、元気になっていくという効果もあります。

なぜ貯蓄と貸付を組織の目的とするのか?農村の貧しい人たちにとって、貧困からの脱却には現金が欠かせません。貧困層は手元の現金がないために、生計手段のためのちょっとした投資(作物の種や家畜の購入など)ができないばかりか、緊急時(家族の病気など)に必要なお金の工面のために高利貸しから借金をして首が回らなくなってしまいます。多くは担保がないために、将来に見込まれる収穫物や労働提供の約束などを担保にして借金をします。足元を見られるので、市場価格から見ればとても不利な条件です。

SRGではまず各メンバーが節約をして貯蓄することを勧めます。毎週集会を開き、各メンバーが自分たちの無理のない範囲(毎週10円から20円ほど)でコモンファンド(グループのたんす預金)に入金します。このファンドがある一定の金額になると、メンバーへのローンをはじめます。ローンの額は大きくはなく(はじめは1ドル前後)、緊急の入用がある人が優先されます。利子は毎月3%-5%ぐらいです。利子やグループのルールはメンバーが自分たちで決めますが、スタッフがアドバイスすることもあります。この時点では、プロジェクトからの資金提供はまったくなく、スタッフによる側面支援(研修など)のみです。SRG設立後半年ほど経過しグループが安定期に入ったと判断できれば、プロジェクトからメンバー一人当たり25ドルほどをコモンファンドへと資金提供します(capital injection)。グループはさらに定期的に貯蓄をし、メンバーへの貸し出しを続け、コモンファンドを大きくしていきます。プロジェクト開始から2004年1月までに対象村落全て(423村落)でSRGが結成されました。全部で1,780のグループがあり、24,649人のメンバーとその家族が恩恵を受けています。プロジェクトからは運営を助けるために約18万ドルを拠出しました。またグループのメンバーが自分たちで貯金した額は合計で約24万ドルにも上ります(1人10ドル弱)。ただし2004年の1年間に24のグループが機能を止めてしまい、事実上は解散という形になっています。またプロジェクトからSRGに対して資金援助を行うかどうかということはCDRTの中でも大きな議論となっており、おそらく将来は資金援助を行わないという方針に転換することになると思います。というのも、外から資金援助を行うことによってSRGメンバーの貯蓄に対する姿勢が崩れてしまうからです。現金へのアクセスを高めることも大切ですが、それを外から提供したのでは、倹約をして貯蓄をするという姿勢・習慣をメンバーが身に付けることができなくなってしまいます。

新規設立されるSRGに対しては15のモジュールからなるトレーニングを提供します。設立当初は毎週スタッフが村を訪れてトレーニングを行い、グループの成長に伴い支援の頻度を減らしていきます。このトレーニングを実際に行うのはスタッフたちですので、スタッフへの研修は多くの時間をかけて行っています。また研修の内容はすでに確立されつつあります。

CDRTではSRGの成長過程を3つのステージに分けて考えています。Formation(形成期)、Stabilization(安定期)、Graduation(成熟期)です。それぞれのステージには条件が設定されており、その条件を満たすと次のステージへ移ったとみなされます。前フェーズまでで1,221のSRGが設立され、今フェーズでは583のSRGが新たに設立されました。しかし、試行錯誤を繰り返しながらですので、まだ完全にGraduationのステージに至ったグループはありません。いくつかのグループがそれに近づいてはいます。現在のところ、ほとんどのグループがこの自助システムの利点を理解し、また十分にその便益を享受して運営を続けています。ただしSRGが存続しているのは(スタッフが訪問頻度を減らしているとはいえ)CDRTが支援を続けているからだという意見ももちろんあります。CDRTが終了したときにSRGはどうなるのか、このあたりが現時点での大きな懸念事項となっています。

SRGは大きな変化を村にもたらします。冒頭に書いたように、女性たちが自信をつけ元気になっていくのが目に見えて分かります。SRGという組織を自分たちだけで切り盛りして、お互いに助け合っていく。今までは高利貸しにお金を借りていて後ろめたかったのが、今では堂々と仲間からお金を借りることができる。それに組織の運営の仕方、集会での発言の方法、組織の中での意思決定の方法など、さまざまな技術やスキルも身につけていきます。このようなことを通じて女性たちはどんどんと自信を深めていきます。SRGがある村とない村を比べるとこの差は歴然とします。SRGがない村では、スタッフが村を訪問しても誰も出迎えてもくれませんし、話を聞ける人も非常に限られます。SRGがある村は活気があり、メンバーである女性たちが元気よく対応してくれますし、いつでも話を聞けます。それに女性が中心となって村のさまざまな開発活動にも参加するようになります。女性たちが元気になると村全体も元気になっていきます。このような理由から、私たちはSRGをプロジェクトの中心と考えて支援に力を入れています。


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