現場ジャーナル 3月21日-3月27日


2005年3月21日(月)

暑くなってきました。ヤンゴンの昨日の気温は39度。今日は40度を超えたようです。いよいよ1年で一番暑い「暑期」に入りました。

暑さとは関係なく仕事のほうは進みます。今日は新たにプロジェクトの対象地域となったエリアのスタッフたちとの打合せを行いました。今日は各エリアのコーディネーターとタウンシップのコーディネーターを集めての打合せです。新しいタウンシップでは、まったくゼロからの出発ですので、現地での仕事を始めるにあたっていろいろと確認しておく事項があります。

例えば、各タウンシップの中で対象となる村をどのようにして選定するのか。選定後、村での開発計画の策定をどのようにして支援するのか。SRGという女性グループの結成をどのようにして支援するか。開発活動をどのようにして始動させるか。その活動をどのようにして実施・管理していくか。またどのようにして活動のモニタリングや評価を行うか。これらは既存の対象地域ですでにやってきたことばかりですが、過去の教訓や反省を活かして、いろいろと改善すべき課題があります。

私もいくつか改善すべき点を提案しています。一つは今日も提案したモニタリング・評価のシステムの導入です。詳しくは日を改めて「プロジェクト」で紹介したいと思います。今日発表してスタッフの反応は評価してくれた声が半分ほどで、あとはいまいちピンときていないようでした。今日は時間が限られていることもあってパワーポイントで一方的に発表するという形をとったのが悪かったのかもしれません。それとも私の提案したシステムそのものが悪かったのか。とりあえず今日は一晩考えてもらって明日以降にフィードバックをもらって、必要があれば変更などを加えていこうと考えています。評価といっても本部が現地スタッフを評価するという位置づけではなく、現場のスタッフが自らを評価して自分たちの仕事の改善に使ってもらうシステムですので、いずれにしても本部で頭でっかちになって考えていても仕方がありません。フィールドで活用してみて使い勝手によって改善していくしかありません。


2005年3月22日(火)

今日も昨日に引き続き赴任前のブリーフィングでした。昨日は各エリアとタウンシップのマネジャーを対象とした打合せでしたが、今日は彼らの下でより現場に近いところで働くスタッフ(Township Facilitators)も加えて行いました。今日の内容は、今後2ヶ月ほどの活動の全体像を確認したあとで、各タウンシップで最初に行うワークショップ、Participatory Rural Appraisal(PRA)、プロジェクトが行う支援活動の内容確認、そしてコミュニティで支援する組織についてなどが議題でした。対象地域が拡張されて今は6エリアあり、それぞれで仕事を任されたマネジャーが配置されています。本部と現場事務所との間には意見の違いがあったりして、足並みを揃えてプロジェクトを動かしていくことはなかなか難しいと改めて感じました。


2005年3月23日(水)

昨日からのブリーフィングは今日で終わりました。これから新しい現場で仕事を始めるにあたっての確認すべき事項は網羅したので、とりあえずはすぐにでも仕事を始められるような体制にはなっています。でも、やりながらいろいろな課題が出てくるわけですから、そのつど対応していくしかありません。これが現場の仕事というものです。

閉会式今日はUNDPミャンマー事務所の所長が終わりの挨拶に来てくれました。UNDPの事務所長というと通常その国のUN機関全体の代表者でもあります。私は今までに何度も同じような研修やブリーフィングをスタッフとやってきましたが、所長が来てくれたのはこれが初めてでした。やはり今回のプロジェクト地域拡大は所長にとっても嬉しいことのようでした。何しろ所長が拡大の提案を政府に対して行って、9ヶ月以上かかってやっと承認が下りたわけですから。またスタッフにとっても所長の励ましの言葉は嬉しかったようです。所長は、現場スタッフもUNのスタッフであり、100%のサポートをすると約束してくれました。実はプロジェクトスタッフは短期契約の派遣社員のようなもので正式なUNスタッフではなく、UNDP事務所に常勤する職員たちと比べると雇用条件や福利厚生などで大きな隔たりがあります。何といっても給料の違いは大きいです。もちろんこのような隔たりは所長のせいではなく、UN全体の決まりごとでそうなっているだけです。でも、そのような扱いを受けているスタッフだからこそ、所長からの言葉が余計に心に響いたようでした。


2005年3月24日(木)

積み残しの議題があって結局今日も現場のマネジャークラスのスタッフと打合せをしました。新しい対象地域ではじめに行うスタートアップ・ワークショップの日程がだいたい固まりました。

モン州・カイン州(4郡対象) 4月1日〜10日
カチン州(5郡対象) 4月下旬(水祭り後)
チン州北部(1郡対象) 4月11日〜12日
チン州南部(3郡対象) 5月第1週

以前も書いたと思いますが、「水祭り(ティンジャン)」はミャンマーの正月にあたりもっとも大きな年中行事です。この間はまったく仕事にならないので、ワークショップもその前後に行うことになります。もっともチン州ではビルマ文化の影響があまりないので、水祭りは関係がないそうです。

水祭り水祭りでは、前の年の悪行やけがれをすすぎ落とすという意味で人々は表に出てお互いに水をかけ合います。この間だけは誰に水をかけてもいいことになっています(僧侶、妊婦、警察官、郵便配達人はだめ)。昔はちょろちょろとかけ合う程度だったそうですが、いまヤンゴンではかなり激しくやっています。道端にはバケツやたらいに水をためて立っている人たちがたくさん並びます。この人たちは誰かが通りかかるとバサッとやるのです。またもっと大がかりなものもあります。街の至る所には高さ2メートルぐらいの「舞台」が設置されます。この舞台の上では40人から50人ぐらいの人(主に若者)が陣取り、前を通りかかる歩行者や車をめがけて水をかけます。舞台にはホースが何本もあり下にあるタンクとつながっていて、思う存分放水することができるのです。舞台の上に陣取るためには1万から5万チャット(1000円から5000円ぐらい)を払うそうです。これは4日間の値段で、舞台によっては食べ物や飲み物が出るということです。また芸能人がつくる舞台もあって一緒に水かけができます。さらに、こういう舞台を回るために車を借りる人もたくさんいます。車を1日借りるには1人5000から1万チャットほど出すそうです。

今年はほとんどのミャンマー人が4月9日から17日まで休みをとります。このうちでも14日から16日までの3日間が本当の水祭りですが、前夜の13日から水を掛け合い始めるそうです。そして17日は家で家族と静かに正月を迎えます。


2005年3月25日(金)

この仕事をやっていると難しいことがいろいろありますが、なかでも難しいのはスタッフの管理です。人事は私の直接の仕事ではありませんが、いろいろと愚痴を聞いたり、相談されたりします。人と人のことはどこの国でも似たようなもので、相性が合う人もいれば合わない人もいます。ミャンマーの人たちの多くは穏やかで、目上の人の言うことは(多少おかしくても)逆らわずに素直に聞く人が多いです。でも、穏やかなミャンマーでもやっぱりなかには少し自我が強くて、自分の主張を通そうとする人もいます。またこういう人は不器用で一徹な傾向があるのかもしれません。私は悪いことではないと思うのですが、年長の人たちにとってはあまり面白くないようです。衝突して口もきかなくなってしまった人たちは何人かいます。かと思えば、へんぴな田舎での仕事で寂しくなったのか、できてしまう男女もいます。傍から見れば気楽なゴシップかもしれませんが、いざ人事異動となると頭を悩ませます。

今回のエリア拡張ではスタッフの大異動がありました。新しいエリアやタウンシップのマネジャーにはいままで勤めてきたスタッフを昇進させたので、新しい勤務地へ異動させることになります。このときにこの人とこの人は仲が悪いから一緒のオフィスに置くのはやめておこうとかいう話になります。なかには誰もほしくないという人がいて、この人の異動先には本当に頭を悩ませました。この人は事務系の管理職的ポストにいるのですが、技術と事務の全体を統括する上司の言うことをあまり聞かずに勝手な行動をとることがあって、エリアのマネジャーたちからは一緒に働きたくない人ナンバー1になってしまいました。結局この人はいままでと同じ勤務地に残ることになりました。今日も含めて何度か注意はしているので改善されなければ来年の契約は更新されないかもしれません。人事って難しいですね。


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