現場ジャーナル 12月13日−19日
2004年12月13日(月)
スタッフ研修2日目です。今日も学びの多い一日でした。今日のメインプログラムは4つのエクササイズです。
- Communication Process
- State Elicitation Exercise
- Attention Tracking Exercise
- Check how well you give training
1はコミュニケーションのプロセスがどのようなものかを理解するとともに、オープンクエスチョン(How,
What, When, Who, Where)の使い方を学ぶというものです。2は参加者の状態に関するもので、どのようにして学びのためによい状態(心、精神、感情など)を引き出すかの演習です。3は参加者の注意をいかにして引きつけて保つかという演習です。最後に4は、トレーナーとしての能力に関するチェックリストを参加者が自らつくるというものです。これによって参加者がこれから村に戻って村人に研修を行うときに自分の研修がうまくいっているのかどうかを自己評価することができます。
2は指示の仕方が悪かったのか、演習前のデモが悪かったのか、始まりのところでつまづきました。また「学びを促進するのに望ましい状態」というのが、いまひとつ参加者にはピンと来なかったようです。結果として、演習を行った「状態」がワンパターン(例えば、interestedやhappyやactiveなど)になってしまったことと、その状態を引き出すための方法もワンパターン(例えば、ゲーム、歌など)になってしまいました。
一方で3はとてもうまくいきました。6人のグループに分かれてもらって、1人がトレーナーとなって好きなトピックについて語ってもらいます。もう1人は残りの人たちの中で、トレーナーには見えないように指示をして注意力を失うように仕向けます。トレーナーは注意力を徐々に失っていく参加者(演技)に対して何とかして注意を再度トレーニングに向けるように努力をするという演習です。3分間この演習を行い、2分間はふり返りの時間です。このふり返りを参加者だけでやったのですが、とてもうまくいきました。
4はまず個人でブレーンストーミングを行ってリストを作ってもらいました。10分ぐらいだったのですが、多い人で15個のアイデアが出てきました。次に5人ぐらいのグループで共有を行いました。各グループとても活発な議論が交わされて、これまたたくさんのアイデアが出てきました。今日はここまでで、次のセッションで全体共有を行います。ゲストからのアドバイスとして、グループでの共有のときに模造紙に書くのではなく、カードかA4用紙に書いてもらうことで、あとでカテゴリー化ができることに気づきました。例えば、スキルに関するもの、知識に関するもの、トレーニングの内容に関するもの、トレーナーの姿勢や態度に関するものなどのカテゴリーが考えられます。
一日の終わりに行った「ふり返り」もとてもうまくいきました。この研修には日本人の先輩ファシリテーターがゲストとて顔を出してもらっているのですが、彼からのアドバイスで行っている方法です。カナダのNGOが開発したORID(Observation,
Reflection, Interpretation, Decision)という手法だそうです。細かい話は別にして、私が参加者に対して行った問いかけは次の4つです。
- What did you do in today's training exercise which you think was the most important?
- How did you feel while you were giving the training (facilitation)?
- What did you learn from this experience?
- How would you give training in your village with the skills and knowledge you gained today?
これらの問いかけは経験学習の4つのステップにも呼応しています。この問いかけを毎日行うことで、参加者の中にふり返りの習慣ができることを期待しています。最終日には、この手法の理論的な側面も説明して、参加者が自己評価や参加型評価にこの手法を使えるようになっ
2004年12月14日(火)
私の担当している研修は一休みです。今日は「数字の読み書き・計算能力」の研修を行いました。トレーナーは以前カチン州へ派遣した大学生たちです。ミャンマーの田舎には数字の読み書きができない人がまだ多く、お金の計算のときなどに困ります。特にプロジェクトで支援しているSRGでは簡単な計算ができることが必須となるので、スタッフ自身がこの数字の読み書きや計算能力を教えられるとかなりの成果があがると見込んでいます。
2004年12月15日(水)
再び私の研修担当です。今日は以下のプログラムで行いました。
- Plan a Training Program
- Design and Conduct a Training Exercise
- Evaluate a Training Workshop
1は研修プログラムの作り方。2は参加型の演習(exercise or activity)の開発と実施について。3は研修の評価についてです。いずれもいつものように演習(エクササイズ)主体の内容です。
ここ3日間研修をやっていて改めて思ったのは、演習前には実際にやって見せること(デモンストレーション)の重要さです。私が英語で指示をして、それをミャンマー語に訳しているのでなかなかニュアンスが伝わらないことがあります。しかも、参加者は少数民族の人たちばかりなので、ミャンマー語が得意でない人も多くいます。というわけで、演習がスムーズに進まないことが多いです。これは私の指示が悪いせいで、やはり実際に演習をやる前にちゃんとやって見せるということが大切だとわかりました。
もう一つ今日気づいたことは、「自己評価」の考えがもともと参加者の頭にないからなのか、伝えるのに一苦労しました。2日前には「よいトレーナーのチェックリスト」として自己評価のための基準をみんなでつくっておいたのですが、いざやってみるとなかなかできないものでした。ですから、一人ずつ説明してなんとかわかってもらえたような気はしますが、これからも現場へ行ったときにフォローしていかないといけない課題です。なにせ、自己評価は「学ぶ」という組織文化を創るためには不可欠ですから。
ちなみに、今日は最後に私の研修を一言で表現するとと質問してみました。出てきた言葉は、learning,
happy, satisfied, I saw my weakness, my skills improved, knowledge, evaluationなどなどでした。
2004年12月16日(木)
今日は13日と15日にやったのと同じ内容の研修を別グループに対して行いました。
今日の学びは、自分の頭で考えて行動するということの難しさです。あるスタッフによると、ミャンマーの人たちの多くは、言われたことを忠実にこなすということを一所懸命やってきて、自分の頭で考えるということが苦手ということでした。これは日本人にとっても耳の痛い話ではないでしょうか。
自分ではあまり気づいていなかったのですが、今回の研修で私がテーマとしているのも、たぶんこのことだと思います。私が研修をしているスタッフの場合、伝える内容はある程度決まっている(SRGについて)ので、それをどう伝えれば一番効果的なのか、実際に村の人たちの生活改善に繋がるのか、これだけです。そのためには、スタッフ一人ひとりが自分の頭で考えて、うまく伝えるための方法を編み出して、常に自分の行動をふり返り改善するというように、臨機応変に対応していかないといけません。今回の研修では、スタッフの中に「気づき」はあったようですが、果たしてそれが行動にまでつながるかどうか。これには、これからフォローアップしていく必要があります。ま、地道に気長にやっていくしかありません。これもまたやりがいのある仕事です。
2004年12月17日(金)
長かった研修も無事に終わりました。疲れましたが充実感のある6日間でした。
明日からは1週間ほど休みをとって地方を旅行してきます。また新たなネタも仕入れてきますので、お楽しみに。