郵便局で小包を受け取る

2005年1月8日

郵便局や銀行へ行くと、その国の事務処理の効率がよくわかります。ここミャンマーでは政府が運営する郵便局、銀行は恐ろしいほど効率が悪く、ちょっとした用事を済ませるのにも1時間や2時間かかることは当たり前になっています。そういえば、以前このエッセイで国内線について書きましたが、これも国営会社のミャンマー航空でした。

それはさておき、今日は郵便局での体験を書いてみたいと思います。実家から本を送ってもらい、それが届いたという通知をもらったのでダウンタウンにある中央郵便局へ出かけていきました。この郵便局は赤いレンガ造りのとても立派な建物で、イギリス統治時代から郵便局として使われてきました。当時の繁華街となっていたStrand Roadに面しています。今でもこの通りにはイギリスやその他の大使館があり、政府の役所もたくさんあります。

まずは荷物を受け取りにこの郵便局の本館へと行きました。2階が小包の部署と聞いていたので行ってみましたが、そこは発送専用で受け取りは本館の裏手にある建物へ行くように言われました。古くても頑丈そうな骨太の鉄階段を下りて、本館から歩いてすぐの別館へと向かいました。別館に入るとまず1階で通知書を見せて署名をします。ここには2人の係員がいて、1人がチェックイン、1人がチェックアウトを担当しているようです。それほど多くのお客さんがいるわけではないので、2人ともとても暇そうです。

チェックインが終わり、すぐ脇にある入り口から大部屋に入りました。どうやらここが届いた荷物を保管して、手渡す部署のようです。窓口は4つありましたが、開いているのは2つだけです。見渡すと、この部屋には40人くらいは職員がいそうですが、ほとんど手持ちぶたさにしています。おしゃべりをしたり、ボーっとしたり。私は1番窓口へ行き、通知書を見せて荷物を受け取りたいという旨を告げました。すると、係りの兄ちゃんは、2枚の用紙を渡して、名前、パスポート番号、署名をするように言われました。とりあえず、言われるままにして用紙を返すと、私の小包を探しに行きました。少し待っていると案外素直に荷物が出てきたので安心しました。でも、これはまだまだ序の口でした。

予想はしていましたが、小包の箱を開けて中を調べ始めました。ミャンマーは検閲が厳しく、本はまだましですが、ビデオ、DVD、CD、テープなどはかなり厳しく調べられます。私の荷物の中には5冊の本が入っていたのですが、係りの兄ちゃんはいい人で1冊だけ調べればいいように計らってくれました。こんないい加減さもミャンマーらしいですね。

でも、検閲は本館のほうなので、またてくてくと本館へと戻りました。ほんの数十メートルですが、何度も行き来するとなると面倒なものです。本館を入るとすぐ右側に何とも怪しい部屋があります。入り口には鉄柵があり、鍵がかかっています。スペシャルブランチ(特別部門)と書かれています。ここが検閲を行う部署のようです。あとでわかったのですが、この部屋は郵便局ではなく警察機関に属しているそうです。このときは何とも間が悪いことに、DHLの荷物が到着したばかりのようで、この荷物を検閲しているようでした。DHLとはいえ検閲から逃れることはできません。それはさておき、荷物が多かったのか、かなり時間がかかりその間それ以外のお客さんは入れてくれません。10分か15分か待たされてやっとこの部屋に入れました。そのときには、入り口にすでに10人ぐらい待っている人たちがいて、みんなわれ先へと入り口めがけて突進します。こんなとき、ミャンマーの人たちは順番ということをまったく無視するので、こちらも負けじとがんばらないといけません。私は一番最前列で待っていたので、がんばって入っていきました。

中には2つの部署というか、機能があるようでした。一つは検閲の係で、もう一つは検閲済みのものを再チェックする係みたいです。検閲には職員が2人、再チェックには1人いました。小さな部屋で、10人も入るともうギューギューです。みんなとにかく自分のものを先に検閲してもらうと必死です。検閲の係員は、私の英語の本を手に取ると、まず表紙を眺め、中をペラペラとめくり、そして目次に目を通していました。案外、ちゃんとチェックしているようでした。そして用紙に"No Objections"と書いてサインをしてくれました。次に私はその用紙を持って、奥の部屋へ行き、そこに机を構えて座っている人に用紙を見せてサインをもらいました。この人は何のためにいるのかさっぱりわかりませんでしたが、まあ、そんなことはどうでもいいでしょう。途上国の役所は失業者対策の最前線となっていますから、職員の存在理由などあまり気にしないに限ります。

やっと検閲が終わりまた別館へと戻りました。やっとこれで荷物がもらえると思いきや、次は手数料の支払いをしないといけないそうです。また別の建物へと送られるのかとヒヤヒヤしましたが、同じ部屋の入り口から対角線方向の端にその窓口があります。ここにもなぜか二人職員が陣取っています。さきほどの1番窓口で検閲官がサインをした用紙を渡すと、さっきのお兄ちゃんが手数料の書類をつくり、支払い窓口へと持って行きます。私はそこで60チャット(約6円)を払いサインをしました。これはどうやら関税のようです。そして、すぐ隣で今度は200チャット(約20円)を支払うように言われました。こちらは検閲代のようです。1冊につき200チャットという計算みたいでした。

これでめでたく全工程を終え、私は荷物を受け取りました。最後の締めくくりはチェックアウトです。2枚の領収書を見せると係員がなにやら番号を控えています。そこに私はまたサインをして、これで無罪放免です。このプロセスにかかった時間は約1時間でした。今回は本しかなかったので1時間で済みましたが、これがビデオなどとなると検閲にさらに時間がかかるようです。まったく恐ろしやミャンマー。ふしぎの国の真骨頂をまたまた見せてもらいました。


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