ミャンマーの国内航空線事情

2004年8月22日

ミャンマー国内には3つの航空会社があります。国営のミャンマー航空、そして民間のヤンゴン航空とエア・マンダレーです。


私が出張で使う路線は3つ。カチン州の現場へはヤンゴン-ミッチーナ路線、チン州へはヤンゴン-カレイ路線、そしてラカイン州へはヤンゴン-シットウェー路線です。シットウェーへは3社とも乗り入れていますが、それ以外はミャンマー航空のみが定期便(隔日)を飛ばしています。結果として、好むと好まざるとに関わらず、ミャンマー航空に乗る機会が多く、この8月までにヤンゴンとの間を5往復しましたが、いずれもミャンマー航空にお世話になりました。

しかし、このミャンマー航空がひどい…。

まず機体。これって、いつの機体?というぐらい古いです。椅子はガタガタ、背もたれは少し力を入れただけで倒れてしまうものが多く、天井からはエアコンからのものと思われる水がボタボタと落ちてくるといった始末。前の乗客が残したゴミが片付けられていないというのはしょっちゅうのことです。と、まあ、ここまでは途上国の国内線であればそれほど驚くことではありません。

一番驚きだったのは、最近のフライトでした。それは、カレイ空港からの帰りのこと。いつものように私は同僚のミャンマー人と一緒に、チェックインを済ませて待合室で飛行機が到着するのを待っていました。言っておきますが、スケジュールというものはあってないようなもので、天候が少しでも崩れれば、飛行機は飛べなくなります。たぶん、機体が古いので、コンピュータによる自動フライト機能といったものが付いていないためだと思われます。まあ、とにかく、これも途上国では特に珍しくもないこと。

またまた脱線しますが、ミャンマーには飛行機が数えるほどしかないので、限られた数の機体を酷使しています。詳しくは知りませんが、一日のうちに一つの機体が二つの路線を廻ることは珍しくないようです。例えば、午前中にヤンゴン-カレイ間を往復した機体は、午後には別の路線を飛ぶといったことです。しかも、ヤンゴンからカレイやミッチーナへ行くときには、必ず需要の多いマンダレー空港を経由します。

私がカレイ空港で待っていたのは、そんなヤンゴン発、マンダレー経由、カレイ行きの飛行機で、そのままとんぼ返りでヤンゴンへ戻るという路線です。しかし、この日は乗客が多かったらしく、ヤンゴン-マンダレー-カレイ-マンダレー-カレイ-マンダレー-ヤンゴンと、マンダレーとカレイの間を二往復もしたりして、予定の時刻よりも大幅に遅れて飛行機はカレイ空港に到着しました。

ようし、これでやっとヤンゴンに帰れるぞ、と思いきや、乗客はまだ飛行機に乗せてくれません。何の指示もないまま待合室で待機です。普段は、マンダレーからの乗客の荷物を下ろし、カレイからの乗客の荷物を積み込めば出発なのに、この日は30分経っても、40分経っても乗り込みの指示がありません。何があったんだろう?と思って、考えたのは、ああ、またVIPを待ってるんだな、ということでした。この国では、大臣などお偉い方々がご搭乗されるときには、必ずその方々のお越しをいつまでもお待ちするという麗しい習慣があります。何しろ、お偉い方々が国を「守って」くれているのですから。

と、思っていたのですが、どうも様子が違うようです。いつまで経ってもVIPは現れませんし、パイロットとスチュワーデスはどこからか戻ってきて、乗り込みの準備が整ったと合図をしています。これは何なの?と思っていると、嫌な予感がしました。ま、まさか、メシ喰ってたんとちゃうやろーなあ。

しかし、その予感は当ったようです。乗客の乗り込みが始まってもトロトロと乗客の横を歩いているスチュワーデスが、空港職員と話しているのを見ると、わたしご飯を食べてお腹いっぱい、というようなジェスチャーをしています。私の同僚に尋ねてみると、そうみたいだね、とのことです。私は自分でも何が起こっているのか、まったく理解できず、しばらく言葉も出ませんでした。いやいや、まだまだミャンマーの奥深さを甘く見ていました。でも、まじめな話、私はかなりショックを受けました。国営とはいえ、顧客に毎日接するサービス産業で、まさかここまで感覚が麻痺しているとは。

しかも、そのトロトロと歩いていたスチュワーデスたちは、飛行機に乗り込むために列をつくって待っている乗客たちの横を通り、当然のような顔をして列の先頭に横入りしていきます。しかも、ご丁寧に私の目の前です。空港職員は私に向かって、「ちょっと待ってね」と笑顔で合図。そんな私の怒りを無視し、スチュワーデスはタラップの階段を上り、私はその後に。乗り込みを終え、席に着いた私は怒りを抑えかねるように隣りの同僚に話をしましたが、同僚は、これがミャンマーなんだよ、とあきらめ顔。あー、なんと情けないこと。一体あなたたちは誰のために働いてるの?と質問してみたくなることがこの国ではよくあります。これに限らず。

悲劇(喜劇?)はこれだけでは終わらず続きが。飛行機は何事もなかったかのように、無事に大空へと飛び出し、巡航速度でマンダレーへと向かっています。私は飛行機の前から二番目の席に座り、しばらくは、なんでこーなんじゃ、と考えながら、何も手につかず窓の外を眺めていました。すると、満腹ご満悦のスチュワーデス3人が、私の前の空いている席に座り始めました。こいつら、どこまで職務放棄するつもりじゃ、と思い、しばらくしてまた見ると、なんと、今度は座ったスチュワーデスのうち2人までもが昼寝を始めるではありませんか。こ、これは、どういうこと?目が点になり、もう完全に言葉を失った私は、これがミャンマーなんだよ、と自分に言い聞かせ、あとは、お腹がいっぱいになったパイロット君くれぐれも居眠りはしないようにね、と祈るだけで精一杯でした。


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